スタートアップにとってのイグジットや資金調達の意味

スタートアップ関連のニュースを見ているとIPOやバイアウト、資金調達などのニュースを多く見かけます。Facebookでシェアされるこれらのポストでよく見かけるのはコメント欄に並ぶ「おめでとうございます」の文字。

結論から言うと僕は「おめでとうございます」ではなく「お疲れ様です」と伝えることにしています。

なぜ「お疲れ様です」なのか。スタートアップにとってのイグジットや資金調達の意味について自分の考えをまとめました。


スタートアップが成長する上での資金的な節目は大きく2つある。

  • 株式と引き換えに運転資金を手に入れる「資金調達」
  • IPOやバイアウトなどの「イグジット」

資金調達と株式

資金調達は重要である。売上以外の大きな資金を得られ、この資金を活用することでプロダクトを発展させることができる。しかし多くの場合、資金調達はVCや投資家への株式の放出を伴い、創業者の保有株式が少なくなると経営における発言権は弱まる。

よってスタートアップの成長に都合の良い資金調達とは、放出する株式を最小限にして最大限の金額を調達すること。そのためにはプロダクトの開発を進めていくことを通じて企業価値と株式の価格を上げ続ける必要がある。そうすることで成長段階に合わせて調達金額を増やしつつも、放出する株式を最小限に抑えることができる。

しかし、うまくいかないケースもある。例えば運転資金は減っていきつつも、プロダクトの開発が進まない場面での資金調達。こうした場合、たとえ初回の資金調達に成功してもその後企業価値と株式の価格が上がらず、初回と同等規模の資金を同等規模の株式で調達することになる。これが続くと調達金額に見合わない量の株式を放出することになり、経営における発言権の低下につながる。

資金調達はプロジェクトの一定の存続につながるが、成長度合いによっては発言権の大きな低下につながる可能性がある。「資金調達=100%ハッピー」というわけではない。

イグジットと経営権、自由度

イグジットの代表例はIPO(上場)とバイアウト(売却)の2つ。いずれも条件次第で創業メンバーに大きなお金が入る出来事。しかしこれらも場合によってはスタートアップにとってハッピーでないことが起きる。

上場するとより多くの資金を得ることができる。しかし上場前に比べて様々な人間が株を持つことになり、短期的な利益向上のプレッシャーが高まる傾向がある。よって長期的な視野になった経営が難しくなる。会社によっては上場後に非上場に切り替え、短期的な利益でなく長期的な利益の追求に舵を戻そうとするケースもある。
(最近だとテスラがこのパターン。撤回したみたいだけど)

バイアウトも同様で、契約次第だが売却後も一定期間プロダクトの運営を売却先の会社の中で行うことを義務化されることがある。次の新たなプロジェクトを立ち上げることを目的にバイアウトを目指した場合、このような契約は足枷になる。

またプロジェクトに関わり続けるとしても、売却先の会社の意向が強く反映され、思ったとおりの運営ができなくなる可能性もある。

金銭面以外にも、プロジェクトやチームメンバーの生活の安定を考えるとバイアウトは魅力的だが、メリットとデメリットの間で悩んだ末に苦渋の判断としてバイアウトを決めるスタートアップもあるだろう。

IPOもバイアウトも資金調達同様「100%ハッピー」というわけではない。


一見華やかなイグジットや資金調達も、スタートアップにとって「してやったり」のケースもあればそうでないケースもあります。全てのイグジットや資金調達のニュースが無条件にハッピーなイベントというわけではないのです。

しかし間違いなく言えるのはこれらの節目はスタートアップにとって「ほっ」とする瞬間だということ。

個人的には資金調達のニュースもイグジットのニュースも、「ほんとお疲れ様でした。引き続き頑張ってください」という思いで見ています。
(そしてコメント欄に書き込んでいます